正月は漫画でしょ、でチェ・ギュソク『沸点』。80年代の民主化闘争を、キャラのたったドラマで熱っぽく読ませる。韓国漫画は初めて、明洞でデモと遭遇した記憶が生々しいうちに読めた。学生本人をあまり描かないバランスが上手い。「変節者が一緒に泣いてはいけませんか」は今だいじな言葉だなあ。 https://t.co/5vJzSSoPtN— 町山広美 (@mcym163) 2017年1月1日
2017年1月1日日曜日
町山広美 @mcym163 “沸点”ツイート
2016年12月14日水曜日
すずきたけし (@takesh_s) “沸点”ツイート
1980年代韓国の民主化闘争を描いた漫画『沸点 』が凄い。— すずきたけし (@takesh_s) 2016年12月1日
韓国映画に出てくる世代間ネタの基礎教養だ。
『グエムル』で次男が火炎瓶作るの得意なのはこの世代だからですね笑
主人公のお母さんが強烈だけど泣かされる。
政治漫画なのに一歩引いた目線に感じるのは著者は77年生まれだからか pic.twitter.com/CC9bQv330q
2016年11月24日木曜日
『弁護人』に泣いた/クォン・ヨンソク(一橋大学准教授)
現在上映中の『弁護人』ですが、新宿シネマカリテでは公開期間中、館内カウンターで『沸点』を販売していただいております。80年代の韓国民主化運動に別の角度から触れることができるグラフィックノベル『沸点』。映画の帰りにぜひ、ご購入ください!
◆ ◆ ◆
『弁護人』に泣いた
クォン・ヨンソク
(一橋大学准教授)
(一橋大学准教授)
久しぶりに映画館で泣いた。私だけではなく80年代を生きた多くの韓国人の胸を熱くしたのは、故盧武鉉元大統領の弁護士時代を描いた『弁護人』だ。『殺人の追憶』『グエムル』でおなじみの名優ソン・ガンホが、「こういう人と同時代を生きたことは幸せ」と思わせる役を見事に演じている。
無名監督が撮った社会派映画にもかかわらず、観客は1000万人を超え歴代興行記録を超える勢いとは、韓国もまだ捨てたものではない。
盧武鉉はコリアン・ドリームそのものだった。貧しい高卒の地方出身者が司法試験に合格し、人権弁護士・国会議員をへて大統領にまで上り詰めたのは、韓国民主主義の勝利の物語だった。しかし映画は彼を英雄化するのではなく、普通の小市民がいかに覚醒し変われるかを描く成長物語を軸としている。
主人公は当初、不動産登記でもうける俗物弁護士だった。だが、E・H・カーの『歴史とは何か』を読んだことが国家保安法違反だとして学生が拷問された事件をきっかけに、人権弁護士へと転身していく。
そして、デモで世の中が変わるほど甘くないと言っていた彼が、87年には民主化デモの先頭に立つ。そこには、革命は特別な人によるものではなく普通の人の勇気ある行動の結果であるとのメッセージがある。
『弁護人』は、当時を知る世代には今の自分の生きざまを問い返す映画であり、若い世代には「国家とは国民である」という憲法第1条の精神を心に刻む映画だ。その意味で民主主義の生きた教科書であり、世代間の架け橋でもある。
ソン・ガンホは、俳優とは「失くした自分を再発見させる職業」と言った。「弁護人」は盧武鉉であると同時に、あの時代を生きた韓国人の姿でもある。多くの観客は、失った自分の姿への悔恨に泣いたのかもしれない。
「弁護人」は「子どもたちにこんな世の中で生きさせたくない」から闘うことを決心する。だが民主化を達成した今日、「独裁者の娘」が大統領となり、若者はコリアン・ドリームも消え失せた超競争社会の中で呻吟(しんぎん)している。
「弁護人シンドローム」は現実の政治に影響を与えるだろうか。映画は映画にすぎないというが、文化の力は侮れない。フランス革命後、ルイ16世はルソーの本を読み「貴様が余を監獄に追いやったな」とつぶやいたという。
韓国でも金芝河の抵抗詩や趙廷来の文学が民主化運動の駆動力となり、ドラマ「砂時計」や映画『光州5.18』が光州事件と軍事独裁に対する認識を大衆化させた。
『弁護人』は歴史に残る/歴史を変える作品となるか。死後むしろ「支持率」が高くなったノチャン(盧武鉉の愛称)は、まだまだ忙しそうだ。
(初出:「社会新報」2014年1月29日号)
2016年11月17日木曜日
【映画『弁護人』】11月19日(土)クォン・ヨンソク+加藤直樹/トークイベント
現在絶賛上映中の映画『弁護人』11月19日(土)新宿シネマカリテで13時の回の終了後、『沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート』(ころから・刊)の翻訳を行った、クォン・ヨンソクさん(一橋大学准教授)+加藤直樹さん(フリーライター)の二人によるトークイベントがあります。
クォン・ヨンソクさん(一橋大学大学院法学研究科准教授)
『沸点』の日本語版刊行は、加藤直樹さんが翻訳、クォン・ヨンソクさんが監訳・解説という日韓のコンビで実現しました。クォンさんは1970年ソウル生まれ。少年時代は日韓を往復して育っているので日本語/韓国語ともにネイティブです。日本外交について研究するかたわら、ニューズウィークなどの媒体に日韓のポップカルチャーや世相について軽妙なコラムを書くなど、多彩な活躍をされています。その集大成が『「韓流」と「日流」』(NHKブックス、2010年)です。以下、クォンさんが14年1月に日本のメディアに書いた『弁護人』評を紹介します。
『「韓流」と「日流」』(NHKブックス、2010年) |
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『弁護人』に泣いた
クォン・ヨンソク
久しぶりに映画館で泣いた。私だけではなく80年代を生きた多くの韓国人の胸を熱くしたのは、故盧武鉉元大統領の弁護士時代を描いた『弁護人』だ。『殺人の追憶』『グエムル』でおなじみの名優ソン・ガンホが、「こういう人と同時代を生きたことは幸せ」と思わせる役を見事に演じている。
無名監督が撮った社会派映画にもかかわらず、観客は1000万人を超え歴代興行記録を超える勢いとは、韓国もまだ捨てたものではない。
盧武鉉はコリアン・ドリームそのものだった。貧しい高卒の地方出身者が司法試験に合格し、人権弁護士・国会議員をへて大統領にまで上り詰めたのは、韓国民主主義の勝利の物語だった。しかし映画は彼を英雄化するのではなく、普通の小市民がいかに覚醒し変われるかを描く成長物語を軸としている。
主人公は当初、不動産登記でもうける俗物弁護士だった。だが、E・H・カーの『歴史とは何か』を読んだことが国家保安法違反だとして学生が拷問された事件をきっかけに、人権弁護士へと転身していく。
そして、デモで世の中が変わるほど甘くないと言っていた彼が、87年には民主化デモの先頭に立つ。そこには、革命は特別な人によるものではなく普通の人の勇気ある行動の結果であるとのメッセージがある。
『弁護人』は、当時を知る世代には今の自分の生きざまを問い返す映画であり、若い世代には「国家とは国民である」という憲法第1条の精神を心に刻む映画だ。その意味で民主主義の生きた教科書であり、世代間の架け橋でもある。
ソン・ガンホは、俳優とは「失くした自分を再発見させる職業」と言った。「弁護人」は盧武鉉であると同時に、あの時代を生きた韓国人の姿でもある。多くの観客は、失った自分の姿への悔恨に泣いたのかもしれない。
「弁護人」は「子どもたちにこんな世の中で生きさせたくない」から闘うことを決心する。だが民主化を達成した今日、「独裁者の娘」が大統領となり、若者はコリアン・ドリームも消え失せた超競争社会の中で呻吟(しんぎん)している。
「弁護人シンドローム」は現実の政治に影響を与えるだろうか。映画は映画にすぎないというが、文化の力は侮れない。フランス革命後、ルイ16世はルソーの本を読み「貴様が余を監獄に追いやったな」とつぶやいたという。
韓国でも金芝河の抵抗詩や趙廷来の文学が民主化運動の駆動力となり、ドラマ「砂時計」や映画『光州5.18』が光州事件と軍事独裁に対する認識を大衆化させた。
『弁護人』は歴史に残る/歴史を変える作品となるか。死後むしろ「支持率」が高くなったノチャン(盧武鉉の愛称)は、まだまだ忙しそうだ。
(初出:「社会新報」2014年1月29日号)
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2016年11月14日月曜日
映画『弁護人』 1980年代韓国の「岩」と「卵」/加藤直樹
80年代の韓国を舞台としたソン・ガンホ主演の映画『弁護人』が11月12日(土)から日本で公開されている。心を揺さぶられる、力にあふれた作品だ。
物語の舞台は1980年代初頭の韓国・釜山。高卒で、工事現場で働きながら独学で必死に勉強して司法試験に合格、今は夢中で金を稼いでいる税務弁護士のソン・ウソクが主人公だ。激動する時代状況に目を向ける余裕もない彼だったが、なじみの食堂の息子ジヌが公安警察によって罪をでっち上げられたことで、彼を救うために、軍事政権と対決する絶望的な裁判に挑むことになる―というストーリー。主人公のモデルは、若き日の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領だ。
重くなりそうな素材を大衆的なドラマにしたてている。前半は商売に励む主人公をほほえましく描く人情コメディのテイスト。だが後半、ジヌとその仲間たちの無罪を勝ち取るための裁判が始まると雰囲気は一転。主人公と検察、公安刑事との法廷での対決が手に汗握る迫力で展開される。
「岩と卵」。それがこの映画のテーマだろう。映画の前半、食堂で酔っぱらったソン・ウソクが、食堂の息子ジヌに「デモなんか行くんじゃないぞ。そんなことをしたって世の中は変わらない。卵で岩を割るようなもんだ」と語るのだが、これに対してジヌはこう反論する。「違います。岩は固くても死んでいるけど、卵は生きている。卵はいつか鳥になって、岩を越えていくんです」。
後半の裁判劇はまさに岩と卵の闘いとなる。 弁護士ソン・ウソクは事実、論理、法律を駆使して独裁政権という「岩」に挑むが、いくたびも砕け散る。しかし彼は決してあきらめない。果たして卵は本当に岩を超えるのか。
もう一つのテーマは「嘘」。政権の嘘。警察の嘘。メディアの嘘。裁判も茶番という意味で嘘。ジヌに加えられる拷問も、彼に嘘を認めさせるためのものだ。だがそうした嘘に取り囲まれていても、ソン・ウソクだけは直球で「本当のこと」を語り続ける。
そんな熱い弁護士の姿に説得力を持たせているのは、いつも不器用な男、場合によっては狂気じみたほど不器用な男を演じてきたソン・ガンホの気迫の演技だ。彼の「顔パワー」が、公安警察幹部さえも動揺させる。
すでに述べたように、この主人公のモデルは盧武鉉元大統領である。その経歴は、おおよそ映画の通りだ。税務弁護士の彼は、先輩に頼まれて面会した学生の体に残っていた拷問の跡を見て衝撃を受け、それをきっかけに熱烈な人権派弁護士に生まれ変わった(なじみの食堂の息子云々はもちろんフィクション)。
韓国で歴代大統領の人気調査をすると、とくに若い世代にダントツの人気を誇るのが盧武鉉だ。庶民的で権威主義を嫌い、権力に正面から挑んだその姿は「パボノムヒョン(バカ盧武鉉)」として今も愛されている。大統領在任中は既得権勢力と対決し、政府から独立した国家人権委員会をつくるなど、韓国の民主化をさらに進めようとした。収賄を疑われての自殺という悲劇的な最後も、既成権力に殺されたようなものと受け止められている。
私が翻訳にかかわった韓国のグラフィック・ノベル『沸点』は、1980年代の韓国を舞台に、ごく普通の学生やその家族たちが民主化運動に飛び込んでいく様を描いた群像劇だが、盧武鉉もまた、そうして行動し始めた80年代の「普通の人」の一人だったわけだ。『弁護人』の主人公ソン・ウソクは、『沸点』の主人公ヨンホと同時代人なのだ。
80年代の韓国では、無数の普通の人々が、理不尽な「岩」に何度も押し返されながら、ついにそれを超えていった。今、崔順実問題で揺れる韓国にもその熱い血が受け継がれている。
卵は鳥となり、いつか岩を越えていく――。
映画『弁護人』のメッセージは、巨大に見える「岩」と崩せそうもない「嘘」の前に立つ私たちの胸を熱くする。映画『弁護人』、お勧めである。
映画『弁護人』のメッセージは、巨大に見える「岩」と崩せそうもない「嘘」の前に立つ私たちの胸を熱くする。映画『弁護人』、お勧めである。
(加藤直樹)
特報1
クォン・ヨンソク+加藤直樹/トークショー
19日(土)新宿シネマカリテで13時の回の終了後、『沸点』の翻訳を行った、クォン・ヨンソクさん(一橋大学准教授)+加藤直樹さん(フリーライター)の二人によるトークがあります。
『弁護人』が韓国でどう見られたのか、クォン・ヨンソクさんの話を加藤さんが聞く予定です!
『弁護人』が韓国でどう見られたのか、クォン・ヨンソクさんの話を加藤さんが聞く予定です!
特報2
新宿シネマカリテにて『沸点』販売中!
『弁護人』公開中、新宿シネマカリテのカウンターで『沸点』を販売させていただいております。皆さん、ぜひ鑑賞の際にご購入ください。
2016年10月3日月曜日
「ガイマン賞2016」投票始まる! よろしくお願いします!
「ガイマン」とは、外国漫画のこと。「ガイマン賞」は、 日本漫画とは異なる多様な魅力をもった世界各国の漫画が日本でも 広く読まれるようにと、京都国際マンガミュージアム、 米沢嘉博記念図書館、 北九州市漫画ミュージアムの三者が共同で開催している賞です。2 011年以来、毎年、 その年に日本で翻訳出版された外国漫画を対象として読者のネット 投票によって選ばれます。
漫画大国・日本ゆえに、 かえって外国の漫画がなかなか入ってきにくい状況が長く続いてい ましたが、この10年ほどでようやく、 アメコミやヨーロッパのバンドデシネなどが翻訳出版されるように なってきました。ガイマン賞は、 この変化に大きな役割を果たしてきました。
さて、今年のガイマン賞の特徴は、 東アジア圏からも多くの作品がノミネートされていること。 そろそろ隣国の優れた作品も、 日本にどんどん紹介されてもいいころです。
そしてせっかくなら、日本漫画と見まがう作品よりも、 日本にはない画風、文法、テーマをもった作品が入ってきて、 日本の漫画の世界をもっと豊かにするきっかけになればいいなと思 います。
その国の状況の中で、その国の人々のために書かれたものなのに、 なぜか今の日本の私たちの胸に迫ってくる。 そんな出会いがいいと思うのです。
そうです。チェ・ギュソクと『沸点』が、 その先陣を切った作品として記憶されれば、翻訳・ 出版した私たちにとっても光栄です、と言いたいわけですね(笑) 。
チェ・ギュソクだけでも、日本で翻訳されるべき作品は『沸点』 以外に何点もありますし、韓国の他の作家の作品でも、 ぜひ日本に紹介したいと思うものがいくつもあります。『沸点』 への注目が、そうした作品の翻訳ラッシュの突破口になれば、 とひそかに考える次第です。ぜひ、ガイマン賞にご参加ください!
◉ガイマン賞サイトはこちら。
海外の優れた作品がたくさん紹介されているので、 じっくりご覧ください。
◉そしてネット投票はこちら。
投票期間は10月1日~11月30日です!
2016年9月23日金曜日
深町秋生氏・“ 沸点” ツイート
『果てしなき渇き』、『アウトバーン』シリーズの作家・深町秋生さんの 『沸点』紹介tweet。
熱い紹介、ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!
熱い紹介、ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!
韓国コミック「沸点」を読んだ。80年代の民主化運動に身を投じる学生とその家族の物語。昔の大友克洋作品みたいな貧乏くさい学生の姿もいいが、「息子がアカに染まるとは」と嘆いていた保守的な母ちゃんや、一般市民たちが手に手を取り、大量の流血と引き換えに直選制を奪取する過程が熱い。泣いた。— 深町秋生・9月末卑怯者の流儀 (@ash0966) 2016年8月27日
韓国コミック「沸点」を読んで思うのは、民主政治を捨てるのは簡単だが、取り戻すのは恐ろしく困難という点。大量の催涙弾と思想警察による拷問、メディアは政府の僕となる。家族からも泣きつかれ、声をあげれば村八分は間違いなし……ということは約70年前に日本も嫌というほど経験したはずだが。— 深町秋生・9月末卑怯者の流儀 (@ash0966) 2016年8月27日
2016年9月15日木曜日
チェ・ギュソク『沸点』を何回も読みかえしてる/のちりょうこ
夜中に目が覚めてしまった。
明日も(今日も)仕事なんだけど。。
チェ・ギュソク『沸点』
この前買った漫画です。
この本を何回も読みかえしてる。
1980年代。わたしは子どもだった。1987年には中学生。隣の国の民主化デモとか、何が起こっているのかとか、あの頃はぜんぜん知りませんでした。
隣の国で起こっていたことなのにな。
あの頃だって社会の授業があって、歴史や地理の授業を受けていたのにな。
毎回違う場面に目がいくので、毎回違うことを考えながら読んでいる。
ワタシ的に、この本の主人公は「お母さん」。
拘置所の壁をこえて入ったあとの「せいぜいもっと高くしておけ!いくらでも越えてやっからよ!」は、名場面のひとつだと思う。
「お母さんサイコー」だよ!
あと。拷問している時に刑事(?)の人が家に電話してる場面。あれは恐怖だ。「今日は帰れない」「子どもはもう寝たのか」という会話。あの刑事にも家族がいて、家に帰れば優しいお父さんなのかもしれないね。でも、職場では取り乱すことなく「(学生を)水につっこめ」と命令する。
こういうことってああいう特殊な場でなくても、そこらで起こっていることなのかもしれない、いや、たぶん、起こっている。「あんなことめったにないよね」「特別だよね」と思うできごとも、いつも「日常」とつながっているのだから。
これからも、何回も読み返すと思う。
ところで。
横浜市の歴史の副読本から、関東大震災のときに朝鮮人が殺された記述がなくなる(かも)、という記事を読んだ。
「誤解を招く表現があった」と。
誤解もなにも、関東大震災は、そんなに遠い昔の話ではないでしょう。
『九月、東京の路上で』を読むといいよ。
横浜での話もあるよ。
前に読んだ山本おさむさんの漫画の中で、関東大震災のときに聴覚障害のある人が殺されたという話もあった。「50円50銭」が言えなくて。
歴史を学ばせることの意味は。
少なくとも、過去を選別して、気に入らないできごとを見えなくすること、ではないよね。
2016年9月7日水曜日
《沸点・書評》是恒香琳さん
『社会新報』(8/31号)で『沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート』をご紹介いただきました。
評者はSEALDsメンバーだった是恒香琳さんです。
私たちは歴史を振り返るとき、どうしても転換点とされる「結果」にしか目がいかない。
そして、それをもってして、「今」には「結果」がないと嘆く。
しかし、その「結果」にはそれに至る「過程」がある。
たくさんの試みと失敗の積み重ね、振動の積み重ねが、あるとき沸点に達する。
そしてやっと「結果」が目に見えるのだ。
水を沸騰させたいなら、火を絶やしてはならない。
こんな当たり前のことを、私たちはすぐに忘れてしまう。
そのことを『沸点』は気づかせてくれる。
(是恒香琳)
2016年8月24日水曜日
1987年韓国民主化闘争動画紹介【チェ・ギュソク『沸点』関連情報】
チェ・ギュソク『沸点』が世に出るきっかけをつくった韓国の「6 月民主抗争継承事業会」が、87年6月の韓国民主化運動とその勝 利の経緯を、17分ほどにまとめた動画を紹介します。
『沸点』 を読まれた方なら韓国語が分からなくても内容は分かるし、 読んでいない人でも、 民主化デモが普通の人々の参加によって膨らんでいくさまを、 迫力のある映像を通じて理解していただけると思います。
パク・ジョンチョルの拷問死。 カトリック司祭団による真相の告発。「改憲論議を打ち切る」 とチョンドファンが宣言した4・13護憲措置。民主憲法戦取( 争取)国民運動本部の結成。催涙弾に当たって死亡した学生、イ・ ハンヨル。
とくに、6月の民主化デモが学生から市民へと拡大していくさまは 圧巻です。
クラクションを鳴らして走るバス。 そのバスの中から白いスカーフをふって民主化の意思を示す女性。 「民主戦取!独裁打倒!」のコールも聞き取れます。
明洞聖堂に立てこもった学生たちに、 隣にある女子高の生徒たちが、誰が言い出すでもなく、 弁当を差し入れたという話。 聖堂の前の掲示板に現れた普通の会社員が書いた張り紙。
オフィスビルの上から舞い落ちるティッシュロール。 デモへの支持をアピールする意味です。 そのうちにサラリーマンたちは「ネクタイ部隊」 として街頭に出てくる。学生デモは、 市民のデモへと変わっていく。 当時を振り返ってあるサラリーマンはこう語ります。「 私たちのような平凡な生活者だって、 社会を少しずつでも変えられるんだと自信をもった」。
「警察官だって大韓民国の国民です!」と呼びかけながら、 戦闘警察(機動隊)隊員の胸に花を挿していくおじさん。 当時の戦闘警察隊員は「とても恥ずかしかったです。みんな、 心にトゲが刺さったような気持ちでした」と証言。
そして、軍部の降伏宣言。盧泰愚の629民主化宣言。
イ・ハンヨルの永訣式。 民主化運動の中で命を落とした人々の名前を一人ひとり呼ぶ、 ムン・イックァン牧師。
賃金引き上げなど、経済的な民主化を求めた87年7月の労働者大 闘争。その後の大統領選では、金泳三と金大中の分裂によって、 軍部出身の盧泰愚が勝利してしまいました。
87年6月抗争以降、民主化運動は南北統一、環境、平和、人権、 フェミニズムといった課題へと拡散した、とナレーション。6月抗 争は未完の革命であり、その意識をもつことが自由、平和、人権、 民主化を実現する途だと、「事業会」の人は結んでいます。
グラフィック・ノベル『沸点』は、 この動画に記録されている歴史的場面の背景にある、 無数の人々のドラマを描き出した作品です。 まだ読んでいない方はぜひ!
沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート |
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