チェ・ギュソク『沸点』が世に出るきっかけをつくった韓国の「6 月民主抗争継承事業会」が、87年6月の韓国民主化運動とその勝 利の経緯を、17分ほどにまとめた動画を紹介します。
『沸点』 を読まれた方なら韓国語が分からなくても内容は分かるし、 読んでいない人でも、 民主化デモが普通の人々の参加によって膨らんでいくさまを、 迫力のある映像を通じて理解していただけると思います。
パク・ジョンチョルの拷問死。 カトリック司祭団による真相の告発。「改憲論議を打ち切る」 とチョンドファンが宣言した4・13護憲措置。民主憲法戦取( 争取)国民運動本部の結成。催涙弾に当たって死亡した学生、イ・ ハンヨル。
とくに、6月の民主化デモが学生から市民へと拡大していくさまは 圧巻です。
クラクションを鳴らして走るバス。 そのバスの中から白いスカーフをふって民主化の意思を示す女性。 「民主戦取!独裁打倒!」のコールも聞き取れます。
明洞聖堂に立てこもった学生たちに、 隣にある女子高の生徒たちが、誰が言い出すでもなく、 弁当を差し入れたという話。 聖堂の前の掲示板に現れた普通の会社員が書いた張り紙。
オフィスビルの上から舞い落ちるティッシュロール。 デモへの支持をアピールする意味です。 そのうちにサラリーマンたちは「ネクタイ部隊」 として街頭に出てくる。学生デモは、 市民のデモへと変わっていく。 当時を振り返ってあるサラリーマンはこう語ります。「 私たちのような平凡な生活者だって、 社会を少しずつでも変えられるんだと自信をもった」。
「警察官だって大韓民国の国民です!」と呼びかけながら、 戦闘警察(機動隊)隊員の胸に花を挿していくおじさん。 当時の戦闘警察隊員は「とても恥ずかしかったです。みんな、 心にトゲが刺さったような気持ちでした」と証言。
そして、軍部の降伏宣言。盧泰愚の629民主化宣言。
イ・ハンヨルの永訣式。 民主化運動の中で命を落とした人々の名前を一人ひとり呼ぶ、 ムン・イックァン牧師。
賃金引き上げなど、経済的な民主化を求めた87年7月の労働者大 闘争。その後の大統領選では、金泳三と金大中の分裂によって、 軍部出身の盧泰愚が勝利してしまいました。
87年6月抗争以降、民主化運動は南北統一、環境、平和、人権、 フェミニズムといった課題へと拡散した、とナレーション。6月抗 争は未完の革命であり、その意識をもつことが自由、平和、人権、 民主化を実現する途だと、「事業会」の人は結んでいます。
グラフィック・ノベル『沸点』は、 この動画に記録されている歴史的場面の背景にある、 無数の人々のドラマを描き出した作品です。 まだ読んでいない方はぜひ!
沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート |