2016年7月24日日曜日

【沸点(ころから・刊)作者・チェ・ギュソク動画】「重いテーマも軽いスタイルで表現したい」

韓国語のニュースサイト「オーマイニュース」のネットTVで、『沸点』作者・チェ・ギュソクがゲストとして登場し、自らの作品や韓国社会について語っている動画を紹介します。
『沸点』を作家・チェ・ギュソクが話をしている姿を見てください。
韓国語による話は多岐に及んでいるのですが、当ブログでは『沸点』にかかわる内容をかいつまんで日本語で紹介します。

オーマイニュースTV「漫画家チェ・ギュソク、“みじめな青春”を描く」

87年の6月抗争のとき、チェ・ギュソクは小学校3年生。そのため、執筆にあたっては当時の運動経験者に話を聞き、当時の手記などを読んだそうです。
彼はそれまで、80年代に学生運動を通じて民主化を担った「386世代」に対していい印象を持っていなかったとのこと。このあたり、日本で団塊の世代/全共闘世代が反感をもたれるのと同じですね。
「俺たちが若いころは頑張った」とふんぞり返るのがウザイ、ということです(今はバブル世代が「ウザイ」のでしょうが)。しかし今回の執筆にあたって、当時、一人の単なる学生として頑張った無名の人たちの話を聞き、その印象が少し変わったとのこと。「本当に苦労したんだなあと」。

それでもやはり、386世代が勝ち取った「民主主義」の現実に対して、チェ・ギュソクは批判的な目も向けます。「ぼくは、かつては小作人だった貧しい農家に生まれ、父は建設労働者でした。そういう人々にとって、結局、民主化とは何だったのか。386世代の人たちに聞いても、満足な答えは得られませんでした」と語ります。意外な質問を受けたように、驚いた表情を見せる人もいたそうです。

この番組で司会を務めるジャーナリストのキム・チョンベは、「では民主主義とはなんですか」とチェ・ギュソクに水を向けます。
チェ・ギュソクの答えは「自分たちが生きている場所を、自分たちでデザインすること」。
しかし、若者の貧困化ひとつを取っても、それは今、機能していない。機能させようという意志が人々の側に足りないのではないか、とチェ・ギュソクは語ります。

ではチェ・ギュソク自身は、民主主義を通じて社会をどのように「デザイン」したいと考えているのでしょうか。
彼の答えは「人が人として扱われる社会」というものでした。そのために自分ができるのは、大衆的なエンターテインメントのジャンルで、そうしたことを表現していくことだと言います。
そして、重く深いテーマであっても、軽く、笑ってしまうようなスタイルで表現することが可能だし、それをやっていくつもりだと。


今回、この番組の聞き取りと翻訳作業を、韓国在住の市村繁和さんにお願いしました。実は市村さんも私たちとは別に『沸点』の翻訳出版を画策していらっしゃいましたが、私たちの方が版元へのオファーが一瞬だけ早く、私たちが出版することになったのでした。そうした経緯をお互いに知った(偶然に)のは昨年末でしたが、以来、いろいろとご協力をいただいています。


参考◎ 『沸点』の作者、チェ・ギュソクについて/加藤直樹